Dynamips は一般的なx86アーキテクチャのコンピュータで動作する,Ciscoルータのエミュレータです.GNU GPL 2.0でライセンスされるフリーソフトウェアであり,誰でも無償で利用することができます.

はじめに

コンピュータネットワーク機器メーカである米国Cisco Systems, Inc.(以下,Cisco)の製品は,長い間業界において事実上の標準として,支配的な位置にありました.

今日でもCiscoの認定資格であるCisco Certified Network Associate (CCNA)は,新人ネットワークエンジニアの登竜門的な資格として位置づけられています.

さて,コンピュータネットワークの実装を計画した際に,様々なネットワークプロトコルに対する理解が十分であれば,机上で設計を行うことは難しいものではありません.しかし,パラメータチューニングによる実際の詳細な挙動を完全に把握することは,よほどの経験がない限り,実機が無ければ難しいでしょう.

また,CCNAを目指すような初学者であれば,教本で学んだ理論やプロトコルを試す機会が必要です1

私個人の経験から[^2]ですが,Cisco製品はコンピュータネットワーク向け専用機の中で,最も優れたデバッグ機能を提供しています.そのため,上記のような検証や学習を行うためには優れた環境であるといえます.

しかし,Ciscoの製品は高価です.

Ciscoの製品は小規模オフィス向けの機械でも,1台あたり20万円前後からであり,ハイクラスの製品となると1台で数千万から億を超えるような製品もあります.さらにネットワークを形成するためには,当然ながらこれを複数台用意する必要があります.

この~検証や学習のために高価なCisco機器を複数台用意することが難しい~という課題を解決してくれるのが,Dynamipsというソフトウェアです.

Dynamipsとは

Dynamipsは,一般的なコンピュータ上でCiscoのハイエンドルータであるCisco 7200をエミュレートするプロジェクトとして,オリジナル開発者であるChristophe Fillotの手により,2005年8月にスタートしました.

このプロジェクトは以下の実現をゴールとしています.

  • トレーニング用のプラットフォームとして,現実に使われるソフトウェア(Cisco IOS)をそのまま使うことができる
    • ネットワーキング技術の世界的なリーダーであるCiscoのデバイスに慣れ親しむことができる
  • Cisco IOSが持つ数多くの機能を試すことができる
  • 実際のルータに展開する設定を簡単にチェックできる

プラットフォームについて

実行環境

x86アーキテクチャで動作するFreeBSD, Mac OS X, Linux, WindowsといったOS上でDynamipsを実行することが可能です.

エミュレーション可能なCiscoルータプラットフォーム

Dynamipsは,Cisco 1700,2600,2691,3600,3725,3745,7200に対応しています.

これらは既に販売終了したプラットフォームですが,学習や機能検証目的であれば,IOSのバージョンがよほど古くない限り不都合はありません.


  1. これをやらずに座学や試験対策だけで資格を取得したCCNA取得者は戦力になりえません [^2:]本記事がルータエミュレータに関するものなのでルータに限定すると,私はCisco以外にBrocade, Juniper, HP, Yamaha, Allied Telesysの製品を業務で使ってきましたが,Ciscoよりデバッグが充実している機器はありませんでした.もちろん,各メーカのすべての機器を触っているわけではありませんが 

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